家族信託 よくあるご質問
Q1
預金について家族信託を利用した場合、子供(受託者)は新しく「信託口口座」を作らなければなりませんか?
A1
子供(受託者)は、自分の財産とは分別して信託財産を管理しなければなりません。(分別管理義務)そのため、信託口口座を作成し信託財産を管理します。しかし、これに対応している銀行は限られます。通常の普通預金口座を新規に1つ作成頂く必要があります。あるいは、今ご活用されていない口座をそれに充てられても結構です。その口座を専用口座として使います。
Q2
不動産について家族信託を利用した場合、何か税金は発生しますか?
A2
不動産の名義は、子供(受託者)に移しますが、ご本人(委託者)が従来通りその利益を受け取る場合、不動産取得税・贈与税はかかりません。ただし、信託の登記申請の際に、不動産評価額の0.4%の登録免許税がかかります。(贈与の場合の5分の1の税率です)
Q3
親が認知症と診断されましたが、信託を利用することはできますか?
A3
病院で認知症と診断された場合であっても、ご本人の理解力・判断能力によって信託を利用することはできます。認知症にも軽いものから重い症状の方もいらっしゃいます。従って、直接お会いさせていただいて確認をさせていただきます。
ただ、状況によっては数週間でかなり進行するケースがありますので、そのような状況である場合は、急ぐことが必要です。
Q4
信託契約書は、公正証書で作成する必要はありますか?
A4
信託契約自体は、当事者間の署名・押印があれば有効に成立します。しかし、金融機関で信託口口座を作成する場合には、公正証書で作成した信託契約書の提出が求められます。また、相続人間での紛争リスクをご考慮される場合は、公正証書で作成することをお勧めしております。
Q5
家族信託契約後の贈与について。委託者兼受益者である父が、信託契約に基づき財産管理を受託者(子)に任せた後、その父が孫に信託財産となった金銭を生前贈与したい場合、直接受託者から孫に贈与できるか。
A5
受託者は、受益者のために財産管理をするのが使命です。生活費に関する費用等を受託者が直接債権者に支払うのは、信託の目的に合っており問題はありません。しかし、受託者が直接受贈者(孫)に送金するのは、目的に該当しない場合は認められません。外観上、受益者の財産を毀損することに受託者が加担してしまう形になるからです。
父親が未だ認知症でなければ、父親名義の銀行口座に一旦資金を移動してから、贈与として、父が実行します。信託財産たる現預金を第三者(孫も第三者)に贈与したい場合には、一旦信託財産から受益者(父)の個人口座に移してから、
父親の意思により贈与すべきです。もし今後父の意思能力の著しい低下や喪失がみられた場合は、父に贈与能力(贈与契約締結能力)がなくなりますので、贈与はできなくなります。
Q6
家族信託の受託者が信託報酬を受領することはできますか?
A6
親族が受託者となる場合、信託報酬を受け取ることは問題ありません。信託業法は、ビジネスとしての受託者を規制する法律で、不特定多数の方から反復継続的に財産を預かる場合に適用となります。従って親族が受託者になっても、信託業法の対象にはなりません。兄弟姉妹の中で受託者を請け負う方には、労力はかかりますので報酬を出しておくという考え方もあります。また、相続対策の方法として若干の前渡しとして報酬を渡しておくという考え方もあります。
Q7
家族信託で受託者が死亡したらどうなるのか?
A7
受託者が死亡した場合、その受託者の任務は終了しますが、その信託は終了しません。「受託者の地位」は相続の対象外であり、その相続人は「受託者の地位」を承継しません。その信託財産は、受託者に関する相続税の課税対象財産にも入りません。しかし、相続人は、知れたる受益者に死亡の旨を通知したり、新受託者が信託事務を引継ぐまで信託財産を保管する義務を負います。(信託法第60条)。
受託者死亡後は、信託契約において、新受託者となるべき者の指定がなされていれば、その者が信託の引受けをし、信託任務の引き継ぎがなされるのを待つことになります。もし、信託行為に新受託者の定めが無い場合、あるいは新受託者として指定された者が信託の引受けをしない等の場合は、原則として委託者と受益者との合意により新受託者を選任できることになります(信託法第62条1項)。なお、すでに委託者がいない場合は、受益者が単独で受託者を選任できます(信託法第62条8項)。
また、信託行為の中で、「受託者が不在となったときは受益者が受託者を指名する。」旨を規定することもできます。必要な場合は、裁判所において新受託者を選任してもらうこともできます(信託法第62条4項)。
なお、受託者が欠けたまま新受託者が就任しない状態が1年間継続したときは、信託自体が終了します(信託法第163条3号)ので、注意が必要です。民事信託においては、受託者が個人となるケースも多いので、死亡のような事態を想定して、次順位の受託者を予め定めておくことが必要かもしれません。しかし、信頼できる受託者をそう簡単に複数人用意することは困難な場合も多いと思われます。そこで、信託の永続性を考えたときには、受託者を個人ではなく「法人」とする仕組みも選択肢の一つとして考えられます。
Q8
信託財産にできる財産とできない財産は、どのようなものがあるのか。
A8
信託財産にできる財産・・・財産的価値のあるもの
不動産、現金、預貯金、有価証券(株・投資信託・国債)、債券(賃料債権、売掛金)、生命保険金、ゴルフ会員権、リゾート会員権、自動車、船舶、特許権、著作権
信託財産にできない財産
負債、年金(受給権)、農地(転用許可が下りるまで・届出受理まで)、預金債権(銀行の預金債権は譲渡禁止特約付債権のため)
Q9
信託銀行で扱っている「遺言信託」と家族信託の中の「遺言信託」の違いはどのようなものか。
A9
信託銀行が扱っている「遺言信託」は、主に
・遺言書の作成支援
・遺言書の保管
・遺言執行
を行います。信託銀行の商品の名称です。主体は遺言です。
家族信託の「遺言信託」とは、遺言の中で信託の仕組みを設定するものを指します。主体が信託です。遺言書なので、ご本人の死亡により効力が生じ、それ以降信託が発動します。
ご参考:遺言と遺言信託
遺言は財産承継先を指定するのみですが、遺言信託は財産承継先の指定と財産管理の仕組みを遺すことになります。
Q10
家族信託において受託者が死亡した場合、信託財産は相続税の対象となるか?
A10
信託財産を有しているのは受益者であり、受託者は財産を管理しているだけであり、死亡しても受託者の相続財産には組み入れられません。
Q11
家族信託で不動産を信託した場合の税金は?@
A11
委託者と受益者の関係により2通りのケースに分かれます。
@委託者=受益者 【自益信託】の場合、
・受託者に対する登録免許税は、課税されます。(贈与時の1/5)
土地・・・固定資産税評価額×3/1000 (特例措置として)
建物・・・固定資産税評価額×4/1000
・受託者に対する不動産取得税は、課税されません。
・委託者に対する譲渡所得税は、課税されません。
・実質的な財産権の移動がないので、贈与税は課税されません。
A委託者≠受益者 【他益信託】
・受託者に対する登録免許税は、課税されます。(贈与時の1/5)
土地・・・固定資産税評価額×3/1000 (特例措置として)
建物・・・固定資産税評価額×4/1000
・受託者に対する不動産取得税は、課税されません。
・委託者に対する譲渡所得税は、課税されません。
・実質的に財産権の移動のため、贈与税が課税されます。
Q12
家族信託の受託者が義務を怠った場合はどのようにすべきか。
A12
家族の信頼関係が崩れ、信託財産の管理・承継に支障が生じます。場合によっては、受託者を解任し、後継受託者を選任することとなります。
※委託者および受益者は、その合意により、いつでも受託者を解任できます(信託法第58条第1項)
Q13
家族信託の受託者は複数の者がなれるか?
A13
受託者を複数とすることは可能です。受託者複数の場合、「信託事務の処理については、保存行為を除いて原則として受託者の過半数
をもって決する」(信託法第80条第1項)となっている点に注意が必要です。過半の意見の一致をみなければ、管理・運用・処分等の業務遂行に支障が生じることになりますので、「受託者は一人」が基本です。
