遺言
●遺言
遺産を残す側として、ご自身の思いを託して記載するものです。
残された者に遺産分割協議をすることなく、遺産を渡せます。
●遺言の種類
「普通方式遺言」は以下の3種類です。他には、緊急時に口述筆記が認められる「特別方式遺言」を用いることができます。
・自筆証書遺言
全文手書きで作成して自宅で保管するだけの最も簡便な形式です。
書き方や訂正・変更のやり方は相続法(民法第968条)で指定があり、指定が明確かつ書式を正しくすることで法的効力を有します。
※平成31年1月13日以降に作成したものから下記が有効となりました。
「財産目録については自書を要しない」ことになり、具体的には、
・財産目録はワープロなどで作成してもよい。
・財産目録は通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等でもよい。
・ただしその財産目録(複数枚の場合は全部)に署名と印を押すこと。
※2020年7月1日より始まった法務局による自筆証書遺言の保管制度
法務局における自筆証書遺言書の保管制度が2020年7月10日からスタートしました。
この遺言書保管制度は、それまで自筆証書遺言のデメリットと言われていた部分を一部補うような制度です。自筆証書遺言は「自分で書いて自分で保管する遺言書」なので、紛失や改ざんの恐れがあります。 相続手続きで使用するためには検認手続きが必要です。これが自筆証書遺言を利用する際の抵抗感につながっていました。
そこで、自筆証書遺言を法務局で保管することで、紛失や改ざんの恐れをなくし、検認手続きを不要にする制度がこの「法務局における自筆証書遺言の保管制度」です。
・公正証書遺言
法律上の契約書面の作成・保管を行う「公証役場」に遺言内容を伝え、代筆してもらう形式です。 作成済みの遺言書原本は公証役場で最長20年間保管され、遺言者自身でいつでも正本・謄本の請求が出来るほか、死亡後は全国どこの公証役場からでも「遺言書の検索」が可能になります。
・秘密証書遺言
遺言者自身で作成・封印した書面を公証役場に持ち込み、封印の証明と遺言書の存在について同役場で記録してもらう形式です。
作成時の書式は自筆証書遺言に準じますが、全文手書きの縛りがなく、パソコンで執筆しても法的効力が生じます。
なお、公正証書遺言と同じく、死亡後は全国どこの公証役場からでも検索が可能になります。
●自力作成のメリット
自力作成の最大のメリットは、遺言者のペースでいつでも・どこでも作成でき、変更や撤回も必要なときにすぐ実施できる点です。遺言書の場所ごと秘匿することも可能で、機密性を重視する人にも向いています。
●自力作成デメリット
一方で、自力での作成には度々触れた「書式不備・保管方法のミス」が生じやすい短所があります。デメリットはそればかりではありません。そもそも相続分の取り決める際は、遺留分など民法を踏まえた配慮とともに、各種控除(小規模宅地等特例・配偶者の税額軽減など)で税額を最適化できる分割方法を考える必要があります。
独力で遺言を作成しようとすると、上記の民法・税法の各専門分野の観点がない内容になってしまい、かえって相続人に負担をかけてしまう可能性があります。
●遺言の不足点
遺言の不足な点としては、次世代までしか思いを残せないということです。また、財産を分けにくい状況がありますと思いとは別に上手く残せないという事態が発生することもあります。
●遺言書の効力と遺留分の関係
遺留分を無視した遺言書であっても、その内容の法的効力は保たれます。
ただし、相続トラブル化は避けられません。無視された相続人が「遺留分侵害額請求権」を行使すると、その相手方となった相続人には金銭を支払う義務が生じ、当然両者のあいだで激しい意見対立が始まります。
このような状況に陥ることを避けるため、あらかじめ遺留分を尊重した内容を指定するか、先に紹介した請求の優先順位の指定を行っておく必要があります。
